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アメリカ大統領選挙の背景―冷戦後の移行期 アメリカ経済の激動―(9)ミスキャスト、「共和党」とブッシュ(星野)

(9)ミスキャスト、「共和党」とブッシュ
 歴史は、ブッシュに歴代大統領の中で、最低に近い評価を与えるかもしれない。
 記憶に刻まれるのは、「テロとの戦い」で軍事介入したアフガニスタン、イラク戦争を泥沼化させ、サブプライムローンによる住宅バブルに発する金融危機、経済不況を世界に広げてしまい、その結果を見ることなく、二期8年にわたる大統領職を去ったということであろう。
 00年に入りも早や、80年代にレーガンの乗れた「共和党」の流れは、逆流し始めていた。時の流れが変わり始めたときに「共和党」の伝統に忠実なブッシュが大統領になったのは、あと説明ではあるが、ミスキャストであった。
 一極主義の積極的平和主義で突き進んだ「テロとの闘い」は、父君ブッシュSrの言葉、「アメリカが冷たい戦争に勝利を収めた」「二つの武装集団に分かれた世界に、いまや唯一の、他にぬきんでた大国、アメリカ合衆国しかない」「西側のリーダーが世界のリーダーになってしまった」「わが国は世界中至るところで自由を支持して、指導的立場をとり続ける」(92年 大統領一般教書演説)に導かれてるように思える。
 味方の世界と悪魔の世界との二つに分ける手法もブッシュの新作ではない。自由主義と全体主義の二つに世界を分け、自由「Free」な世界を強制「Coercion」する世界から守ることを宣言した、冷戦開始を告げたトルーマン・ドクトリン(47.3.12)に先例がある。
 共和党リンカーン大統領による南北戦争勝利以降の約50年は、アメリカが綿花に代表される農業国からU・Sスチールに代表される重化学工業化によって、世界の大国に躍進した時代であった。同時にその50年間は、大統領も上院もほぼ共和党が支配し続けた。自由な企業活動による創造と政府による介入を少なくし小さな政府を守るその伝統はその頃から共和党政治に根づいた。これが、アメリカ経済政治の保守本流となる。民主党は、この保守本流の政治が行きづまった時に、保守にとらわれることなく自由(リベラル)に政策変更し軌道を修正する役割を発揮してきた。その代表例が、大恐慌時代の共和党フーヴァーの「共和党」伝統による対応の行きづまりから、民主党ルーズベルトのニューディールへの切りかえである。
 ベトナム戦争、イラン大使館人質事件などでの自信喪失、70年代の経済停滞を背景に、「強いアメリカ」「アメリカ経済の再生」を求めて登場したレーガンにとって、自由な企業の創造力を生かす共和党の伝統はまさに時流に乗るものであった。
 ゆるみすぎた規制、ふくらみすぎたバブルなどの中で、冷戦後移行期が終わりに近づき各国が多極化の可能性を求めてるときに唯一の大国をふりかざすには、共和党伝統を望む時流は過ぎ去っていた。共和党の伝統に忠実なブッシュにとって、まさに不運な時の流れだった、というしかない。

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